相続人になれない場合

相続欠格とは

本来、相続人となるべき者が、相続する権利を剥奪される場合があります。それを相続欠格といいます。相続欠格に該当するのは次のような場合です。
被相続人や自分より相続順位が先の者あるいは同じ者を殺害したり、殺害しようとして刑に処せられた場合
被相続人が殺害されたことを知っていながら、告訴も告発もしなかった場合
ただし、判断能力がない者や、犯人の配偶者または直系血族である者は除かれます
被相続人が遺言を作成・取消・変更しようとしたときに、詐欺や強迫によって妨害しようとした場合
詐欺や強迫によって、被相続人に遺言を作成・取消・変更させようとした場合
遺言書を偽造、改ざん、破棄、隠匿などした場合
ちなみに、相続欠格に該当した相続人の代襲者(子などの直系卑属)には相続権があります。
相続欠格の場合特段の手続きは不要です

相続廃除

被相続人が死亡する前の法定相続人を推定相続人といいます。この推定相続人が、相続欠格に該当するほどの行為ではないにしろ、被相続人を虐待するなどの著しい非行があるような場合は、被相続人の意思によって、相続権を剥奪することができます。

これまで親にさんざん金をせびり、遊び歩いてきた放蕩息子などにどうしても財産を渡ることが我慢ならないようなときに利用されるのが、推定相続人の廃除です。
廃除の対象になるのは遺留分のある推定相続人、つまり配偶者、子とその代襲者、直系尊属です。兄弟姉妹にはもともと遺留分がないので廃除の対象ではありません。

相続人の廃除の理由としては次のような場合があげられます。
被相続人に対する虐待
罵声を浴びせたり、殴る、蹴るなどの暴行が日常的であったり、寝たきりの被相続人を看護することなく放置し、食事も与えず衰弱させたような場合です
被相続人に対する重大な侮辱
日常的に外部に聞こえるように被相続人を無能呼ばわりしたり、被相続人の秘密を勝手に公表し、被相続人の名誉を著しく傷つけたような場合です
その他の著しい非行
定職に就くこともなく、被相続人の財産を使ったり、盗んだりしたり、自分の家族をないがしろにして愛人と同居したり、刑に処せられるほどの罪を犯したような場合です

相続廃除の手続き

相続廃除の手続は大きく分けて2通りの方法があります。
生前に行う場合
意思能力のある被相続人が家庭裁判所に対して、相続人廃除の調停または審判を申し立てます。申立てに必要な書類は次のとおりです。
 相続人廃除の調停(審判)申立書
 被相続人の戸籍謄本
 被廃除者の戸籍謄本
 収入印紙1,200円分
 郵便切手約800円分
死後、遺言で行う場合
被相続人は遺言の中で推定相続人を廃除する旨の記載をすることができます。遺言による廃除の場合は、遺言執行者でなければ手続することはできません。申立ての手続は生前に行う場合と同様です。

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家庭裁判所で相続廃除の調停が成立、または審判が確定すると、被廃除者である相続人は直ちに相続権を失います。

即時抗告

審判によって相続人から廃除する旨の告知を受けた被廃除者は、告知を受けてから2週間以内に不服申し立てをすることが許されています。これを即時抗告といいます。即時抗告がなされると、審判が確定するまでは相続の執行が停止されます。
逆に、被相続人からの廃除申立てが却下される場合もありますが、この場合も即時抗告が認められています。

相続廃除の現状

簡単には相続廃除は認められません。

このように家庭裁判所に申し立てることでできる相続廃除ですが、簡単には認められません。そもそも廃除は、相続人から相続権を剥奪するという、人の身分関係に重大な影響を与える制度です。ゆえに家庭裁判所としても家庭環境などの非行の原因にまで踏み込んで、慎重に調査し、個別的に判断します。一時の激情による暴力や単なる素行不良程度ではまず認めず、極端な虐待の事実などが明らかにならない限り認めないスタンスを取っています。
相続廃除は取り消すこともできます。遺言による場合は遺言書を変更するなどすればいいですし、生前にした場合は家庭裁判所に申し立てて取り消すことが可能です。
ちなみに、相続廃除された相続人の代襲者(子などの直系卑属)には相続権があります。

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