相続税の対象となる財産

相続税は、相続人や受遺者が死亡した人の財産を取得した場合に、その取得財産に対してかかります。ただ、すべての財産にかかるわけではありません。以下に相続税がかかる財産をまとめてみました。


本来の相続財産

死亡時に被相続人が所有していた、現金、預貯金、株式、債券、土地、建物、宝石、書画、骨とう品、家財道具、事業用資産、売掛金、貸付金、特許権、著作権、会員権など、金銭に見積もることができるすべての物



みなし相続財産

本来の相続や遺贈によって取得した財産ではないが、相続や遺贈によって取得したものと同じ効果がある財産。生命保険金、死亡退職金、損害保険金など

生前の贈与財産

相続や遺贈で財産をもらった人が、相続開始日(死亡日)前3年以内に、被相続人から贈与で財産をもらっている場合には、原則としてその財産の贈与された時の価額を相続財産に加算します。

相続財産から控除できるもの

相続税は原則、被相続人が死亡した時に所有していたすべての財産と、相続や遺贈によって取得したとみなされる財産にかかると説明しましたが、相続税を算出するときに控除できるものもあります。

非課税財産

墓地、墓碑、仏壇、仏具、香典など
宗教、事前、学術、その他公益を目的とする事業を行う人で、一定の要件に該当する人が取得した財産であって、その公益を目的とする事業のように供することが確実なもの
心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
相続した財産を国や地方公共団体や特定公益法人に寄付した場合、または特定公益法人の信託財産に支出した場合などで一定の要件に該当するもの

債務

相続では、被相続人が所有していた財産だけでなく、被相続人の債務も承継します。相続税は、被相続人の正味の財産に対して課税する税金なので、相続税を計算する際には、債務額を差し引くことになります。
このとき差し引くことができる債務は、相続開始時において確定しているものに限られます。差し引く金額は、相続開始時点の現況による金額とされています。

なお、債務の中には、被相続人が支払う必要があった固定資産税、住民税などの各種税金も含まれます。この場合、相続人の中で代わりに支払う人の課税価格から控除することになっています。

基礎控除

すべての相続税を計算する場合に必ず行うのが基礎控除です。基礎控除の額は、

5,000万円+(1,000万円×法定相続人数)

で算出されます。具体的には、相続人が妻と子ども3人の場合、基礎控除の額は、

5,000万円+(1,000万円×4人)=9,000万円

となり、この金額が相続対象財産から差し引かれます。
もし、相続対象財産の全額が基礎控除を下回ることになれば、相続税はかからないことになります。日本の相続全体で相続税を支払うケースが4%である理由はこの基礎控除が大きいからといえるでしょう。

生命保険金控除

死亡保険金については、契約者と被保険者が同じで、受取人が異なる場合には相続税が課せられます。しかし、死亡保険金は一家の大黒柱が死亡したような場合に、残された遺族の生活を保障する重要な財産なので、一定の非課税枠が設けられています。
死亡保険金には法定相続人1人当たり500万円までの非課税枠があり、相続税の対象となる財産を計算するうえでこの部分を差し引くことになっています。具体的には、相続人が妻と子ども2人で、保険金が3,000万円だった場合は、

3,000万円-(500万円×3人)=1,500万円

となり、1,500万円が相続人全体の非課税限度額になります。この非課税限度額を各相続人に振り分ける場合は、

非課税限度額×(その相続人が取得した保険金の合計額÷すべての相続人が取得した保険金の合計額)

という計算をします。

なお、非課税限度額を控除できるのは、相続人に限られますので、内縁の配偶者、代襲相続人ではない孫、相続を放棄した者はこの控除の恩恵をうけることができず、取得した保険金全額が課税対象額になってしまいます。
POINT 相続放棄した者も死亡保険金を受け取ることができます。なぜなら保険金は相続対象財産ではないからです。しかし、納税に関しては相続税が課されることになっています。

死亡退職金控除

対象は死亡後3年以内に支給が確定した退職金です。の死亡退職金についても、生命保険金控除と同様の控除が認められています。
なお、保険金も退職金も受取金額が非課税枠を下回れば、全額が非課税となります。

配偶者控除

控除の中でも、配偶者の税額控除は、特に優遇されたものといえます。配偶者控除が他の控除よりも優遇されているのは、

①被相続人の財産形成に配偶者が貢献している
②残された配偶者の老後の生活保障
③将来配偶者の死亡時に相続税をかけることができる

というのが理由とされています。

実際の配偶者税額軽減制度は、

 ① 1億6,000万円

 ② 配偶者の法定相続分相当額

いずれか多い金額までは配偶者に相続税はかからない、とされています。つまり、配偶者の取得額が1億6,000万円以下ならば相続税がかからず、また、配偶者がたとえ何十億円取得しようとも、それが法定相続分の範囲内であれば、相続税がかからないということです。

ただ、配偶者控除の恩恵を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。
法律上の正式な配偶者であること
申告書の提出期限までに遺産分割が行われ、配偶者の相続財産が確定していること
相続税の申告を行うこと
申告書に配偶者控除の適用を受ける旨と軽減される金額の計算明細を記入し、戸籍謄本、生命保険金の支払通知書等の財産取得状況がわかる書類を添付すること

未成年者控除

相続人の年齢が20歳未満の場合は、成人に達するまでの1年につき6万円が相続税額から控除されます。この控除を受けられるのは、以下の要件を満たす人です。
相続や遺贈で財産をもらったときに20歳未満であること
法定相続人であること(相続放棄した人も含む)
相続や遺贈で財産をもらったときに、日本国内に住所があること

障害者控除

相続または遺贈によって財産を取得した法定相続人(相続放棄した人も含む)が満70歳未満の障害者である場合には、その障害者が満70歳になるまでの年数1年につき6万円を差し引くことができます。なお、1級、2級の身体障害者手帳を持っている人、重度の知的障害者と判定された人(知能指数がおよそ35以下)、1級の精神障害者手帳を持っている人(以上特別障害者という)は1年につき12万円を差し引くことができます。

なお、未成年者控除も障害者控除も、1年に満たない月があるときは、1年で計算します。

贈与税控除

被相続人の生前に贈与を受けると贈与税が課されます。一方、相続開始前3年以内の贈与は相続財産の対象になりますので、相続税が課されることになります。すると、贈与税と相続税の二重課税になってしまいます。このような場合は、相続税額からその財産に課された贈与税額を差し引くことで調整します。

外国税額控除

被相続人の外国にある財産を相続や遺贈によって取得したため、その財産について外国の相続税に相当する税金が課税された場合には、日本と外国での二重課税を防ぐ意味で、その人の相続税額から外国税額控除として一定の金額が差し引かれます。

相次相続控除

相続が間を置かずに続けて起こると、一度相続税をかけられた財産に対し再度税金がかけられてしまいます。これではあまりにも税負担が重くなってしまうということで、一定の金額を相続税から差し引いてもいいことになっています。これを相次相続控除といいます。この控除を受けるためには、「10年以内に2回以上の相続があったこと」が必要です。なお、控除が行われるのは、二次相続のときです。

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