相続人の中に行方不明の者がいるとき
Q 先日父が亡くなり、父の財産を母と兄弟3人が相続することになりました。しかし、真ん中の弟が2年前から連絡が途絶え、現在どこにいるのかわかりません。相続手続には期限があると聞きました。この場合、真ん中の弟を除いた3人で遺産分割協議をしても問題ありませんか?
A.問題があります。相続人の一部を除いた形での遺産分割協議は無効です。この場合は、他の相続人が利害関係人として家庭裁判所に申し立て、不在者のための財産管理人を選任してもらいます(不在者財産管理人)。その後、財産管理人を参加させて、遺産分割協議を行います。ただ、財産管理人の権限は、不在者のために財産を保存、利用、改良する行為しか認められていませんので、遺産分割協議に参加し、財産分けに同意する(処分行為)ためには、家庭裁判所の許可が必要です。
なお、行方不明から7年以上経過しているような場合は、家庭裁判所に失踪宣告の申立てをし、それが認められれば、その人は死亡したものみなされ、相続権を失いますので、その人を除いて遺産分割協議が可能となります。
不在者財産管理人についてはこちら
失踪宣告についてはこちら
相続人の中に未成年者がいるとき
Q 先日夫が亡くなり、相続人は妻の私と未成年の子どもが2人の計3人です。相続人の中に未成年者がいる場合は、遺産分割協議はどのようにすればよいでしょうか?
A 未成年者は単独では有効に法律行為をすることはできません。つまり、法律行為をする場合は原則として、法定代理人が代理するか、法定代理人の同意が必要になります。遺産分割協議も法律行為の一種ですので法定代理人のサポートが必要です。両親のうち一方が欠けた場合は、もう一方が法定代理人となります。
今回のような場合は、親権者である奥様が、未成年者の2人の子どものために、家庭裁判所に特別代理人の選任を請求しなければなりません。そのうえで、奥様と特別代理人が遺産分割協議をすることになります。なお、未成年者が複数いるときは、特別代理人も複数になります。また胎児にも相続権がありますので、遺産分割協議を行うときは特別代理人を選任する必要があります。
※特別代理人は一般的に相続権を有していない親族の方がなるケースが多いです。
特別代理人についてはこちらもご参照ください。
同時死亡の時の相続
Q 先日、私の夫Aと長男Bが同じ交通事故で亡くなりました。警察に聞いたところ2人のうちどちらが先に亡くなったのかはわからないということでした。遺族は私と長男の妻と長男の娘2人です。この場合、どのような相続になるのでしょうか?
A 複数の人が亡くなり、そのうちある人が死亡した時点で他の人が生きていたかどうかがはっきりしない場合は、法律上、その人たちは同時に死亡したものと推定されることになっています。今回のようにどちらが先に亡くなったのかがわからないケースは正に同時死亡と推定されます。
この場合、死亡者同士の間には相続関係は発生しません。つまり、Aさん、Bさんの親子が同時に亡くなった場合、Aさんの財産はAさんの相続人に承継され、Bさんの財産はBさんの相続人に承継されることになります。
質問のケースでいうと、Aさんの財産は、Aさんの奥様とBさんの代襲相続人である2人の娘さんに引き継がれ、Bさんの財産は、Bさんの奥様と2人の娘さんに引き継がれることになります。
内縁関係
Q 私には別居中の妻と子どもがいますが、別に他の女性と10年にわたり同居しています。妻とは離婚の話し合いをしていますが、いっこうに進展しません。もし、今私が死んだら私の財産はどうなるのでしょうか?
A 現状では奥様とお子さんが財産を相続することになります。内縁関係である同居女性には相続権はありません。
もし、同居女性に財産を残したいのであれば、生前贈与をするか、遺言を残す必要があります。ただし、生前贈与の場合は多額の贈与税がかかりますし、遺贈の場合は奥様とお子さんの遺留分の問題を考慮する必要があります。
遺言と異なる遺産分割
Q 先日父が亡くなり、遺言を見つけました。遺言には遺産分割の方法が指定されていましたが、このとおりに分割しなければならないのでしょうか?違う割合で分割することはできないのでしょうか?
A 遺言内容とは異なる遺産分割も可能です。ただし、相続人全員(遺贈がある場合は受遺者も含む)の同意が必要です。1人でも反対すればできません。
ただ、遺言執行者がいる場合は、遺言執行者の同意も取り付ける必要があるでしょう(東京地裁昭和63年5月31日判決)。
なお、遺産分割協議が終わった後で、遺言書が見つかったような場合は、原則として遺産分割協議が無効となります。しかし、相続人全員にこのまま維持しようという合意が形成されれば、遺産分割協議は有効となります。ただし、遺言執行者が指定されていれば遺言執行者の追認が必要になります。しかし、遺産分割協議よりも遺言の内容のほうが有利な相続人がいれば、合意を形成することは難しくなるでしょう。
また発見された遺言書の中に、認知や遺贈についての指示があれば、当然遺産分割協議は無効となり、再度遺産分割協議をするしかありません。
農地の相続
Q 先日農業を営んでいた父が亡くなりました。サラリーマンの私が農地を相続したのですが、相続する場合は何か手続きが必要なのでしょうか?
A 農地法3条により、本来農地を取得する場合は農業委員会の許可を取る必要があります。しかし、農地の取得が「相続」による場合は、農業委員会に対し「届出」をするだけですみます。この場合、法定相続か「相続させる」旨遺言による相続かのどちらかになります。
一方で遺贈の場合はどうでしょうか?「全農地の3分の1を遺贈する」のような包括遺贈の場合は、受遺者は相続人と同じ権利義務を持ちますので、届出で足りるとされています。しかし、「○○市△△町にある農地を遺贈する」のような特定遺贈の場合は、許可が必要とされています。
なお、原則として農業を営む人以外に農地を特定遺贈することに農業委員会が許可を出すことはないと思いますので、事前に農業委員会または当事務所にお尋ねください。
一般的なご質問
・専門家に依頼しなくても、相続手続きは出来る?
・初回の相談は本当に無料なの?
・相続手続きは、どこの事務所に依頼しても同じでしょ?
・相続すると必ず税金(相続税)を払う必要があるの?
・故人に借金があることを知らなくても、相続すると借金を引き継がなければならないの?
・家の名義が何十年も前に亡くなった祖父のままなんだけど、どうしたら良い?
専門家に依頼しなくても、相続手続きは出来る?
複雑な案件でない限りは専門家に依頼しなくとも出来ます。
当HPに具体的な進め方も掲載してありますし、分からないことはインターネット上で大概検索出来ます。ただ、「漏れ」のないようにお気をつけください。手続きをしなかったがばかりに、損をしてしまったということも多々あります。
もしお時間のある方は、ご自分で手続きを進めてみてはいかがでしょうか?そして分からない部分のみ専門家に依頼したり、相談していくスタンスで良いと思います。
ご自分で手続きを進められる方へ
当ホームページで相続手続きの流れをご参照頂き、まずは全体像を把握するといいと思います。
専門家へ任せたいと思われている方へ
①借金があるかもしれない ②家族関係が複雑である ③連絡が取れない相続人がいる ④相続人間で遺産分割(話し合い)がまとまりそうにない 上記の複雑な案件以外に、相続手続きに時間を使っていられない、何から手をつけていけば良いか分からない等のお悩みを抱えている方は、ぜひ当事務所の「無料相談」をご活用ください。
当事務所は税金関係を除いて相続手続きをサポートする「相続手続きパッケージサービス」もご用意しております。相談は本当に無料なの?
無料です。
相続人が誰になるのか、相続財産はどうやって調査するのか等どんな内容の相談でも結構です。相談したからといって当事務所に依頼を強いることもしませんので、安心して初回無料相談をご活用ください。
相続人が誰になるのか、相続財産はどうやって調査するのか等どんな内容の相談でも結構です。相談したからといって当事務所に依頼を強いることもしませんので、安心して初回無料相談をご活用ください。
相続手続きは、どこの事務所に依頼しても同じでしょ?
必ずしも同じではありません。どこの事務所に依頼しても、不動産の所有権移転に必要な遺産分割協議書は作成するでしょう。しかし、債務(借金)の調査を徹底しているところは少ないでしょうし、相続手続き全般のことまでまで提案する事務所は現時点では多いとは言えません。
相続すると必ず税金(相続税)を払う必要があるの?
いいえ、相続したからといって全ての人が相続税を納めるわけではありません。 相続税が発生する方は、6%程度だと言われています。 (5000万円+1000万円×相続人数)より、遺産総額が少なければ、相続税の心配は不要です。 それを超えたとしても、配偶者控除・小規模宅地の特例など様々な特例があり、相続税を支払う方は非常に少なくなるのが現状です。
故人に借金があることを知らなくても、相続すると借金を引き継がなければならないの?
その通りです。一定期間内に、「限定承認」「放棄」等の手続きをとれば別ですが、何もせずにいた場合、故人の借金も相続人が負うことになります。 HP内にも記載がありますが、上記の理由からも分かる通り、相続が発生したら、なるべく早い段階で故人の借金の調査をしてください。
家の名義が何十年も前に亡くなった祖父のままなんだけど、どうしたら良い?
その場合、名義人の方の相続手続きが完了していないということです。今からでも、遅くはないので、相続手続きをなさった方が良いと思います。 家に住むだけであれば、特に問題は起こりませんが、将来的に建て替える・売却する・担保にするなどのときに、亡くなった方の名義のままでは手続きが進められません。早い段階で相続手続きをお済ませになることをお勧めします。
当事務所は相続・遺言・遺産分割・家庭裁判所への申立書の作成等多数の家事事件を取り扱っておりますので、お気軽にご相談ください。