失踪宣告の取り消し

失踪宣告の取消の申し立て

失踪者が、生きていることが明らかになれば、その者を死んだものとして取扱うのば不合理ですから、失踪宣告は取消すことが必要です。

そこで法律は
・失踪者が生存すること
又は
・死亡したとみなされる時と異なるときに死亡したことの証明があった時は、
家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければなりません。(民法32条1項、家審9条1項)


失踪宣告取り消しの審判の効果


失踪宣告の取消の審判は、即時抗告期間の経過により確定し、その効力を生じます。(家審13条、家審規43条) 
失踪宣告が取り消されると、当該失踪宣告は失効し、相続も開始しなかったこととなります。
つまり、初めから失踪宣告はなかったこととなりり、原則として財産関係や身分関係が元通りに復活します。つまり、相続は開始しなかったことになりますし、婚姻は解消しなかったことになります。

しかし、その期間に取引をした第三者は保護しなければなりません。
そのため、失踪宣告後、その取消し前に善意でした行為は、その効力を妨げられません。(民法32条1項後段)
(ここでいう「善意」とは、失踪者が生存すること又は死亡したとみなされる時と異なるときに死亡していることをその行為の時に知らないことをいいます。)

①失踪者が生きていたことを知らないでした行為(相続財産の処分など)は有効です。また、失踪宣告により直接的に財産を得た者(相続人、財産を遺贈された者、生命保険金の受取人など)は、失踪宣告の取消しにより財産を失う場合でも、その利益が残っている限度で失踪者に返還すればよいとされます。    

②再婚している場合、失踪宣告後に再婚した当事者双方がともに失踪者が生存していることを知らなかったときは、失踪宣告が取り消されても前の婚姻関係は復活しないとされています。しかし、後婚を優先して、前婚は復活しないという考え方もあります。  


判例 


相続人が相続財産を売却し、その後、転々譲渡された場合には、取引当事者が善意の場合に限りその有効性を認めています。(大判昭13.2.7) 
つまり、取引のどちらか一方でも失踪者が生存していることを知っていれば取引の効力は失効します。 この場合の返還の範囲は、現に利益を受けている範囲に限られます。
例えば、パチンコに使っちゃっいれば、利益は現存していないので、返還する必要はありません。 しかし、生活費に充てた場合などは、返還しなければなりません。債務の返済に充てていた場合も同様となります。


失踪宣告の取消の申し立て


①申立権者
本人、利害関係人です。
利害関係人は、失踪宣告の申立権者としての利害関係人より広く、失踪者の権利回復につき利害関係を有するすべての者を含むと解されています。
そのため、失踪宣告の申立人、内縁の妻なども利害関係人に当たるとされています。

②管轄
失踪者が生存している場合は、失踪者の住所地の家庭裁判所です。
異なる時期に死亡している場合は、失踪宣告をした家庭裁判所です。

失踪宣告の取消の申立に必要な書類

  • 失踪宣告取り消しの申立書
  • 申立人の戸籍謄本及び失踪者の戸籍謄本
  • 失踪者の写真及びその他取り消し事由を証する書面
  • 利害関係を証する資料
  • ※事案によっては、このほかの資料が必要となる場合があります。

失踪宣告の取消の申立の報酬と費用

報酬
  • (1) 失踪宣告取り消しの申立書作成 ..... 108,000円(税込)~
  • (2) 戸籍関係書類の取得 ..... 1通につき 1,080円(税込)
費用
    • 申立書1通につき収入印紙800円と連絡用の郵便切手(申立てをする家庭裁判所により異なります。)、官報公告料等の実費が必要となります。
      また、戸籍関係書類を取得するために市役所に対して手数料(300円~750円)が必要となります。

失踪宣告の取消の審判後


申立人は、失踪宣告取消の審判が確定した日から10日以内に、審判書の謄本及び確定証明書を添付して、届出をしなければなりません(戸籍法第94条、第63条第1項)


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