遺贈

遺贈とは

日本の相続制度は、遺言による相続と法定相続による相続の2通りを認めています。被相続人の死後に遺言書が発見された場合は、法定相続よりも優先して遺言書の内容に沿った相続が行われます。
遺言によって、財産を相続人または相続人以外の者に与えることを遺贈といいます。そして遺贈を受ける者を受遺者といいます。遺贈は被相続人による単独行為なので、受遺者の事前の承諾を必要としませんが、受遺者が遺贈を拒否することももちろん可能です。
もし、被相続人が、友人や息子の嫁など相続人以外に財産をあげようと思うのならば、遺贈の方法をとるしかありません。遺贈には「特定遺贈」「包括遺贈」の2種類があります。

 特定遺贈とは、「どこどこの土地、家屋を与える」というように具体的な財産を示して行う遺贈のことをいいます。特定遺贈の受遺者は、債務を負担する義務を負わず、プラスの財産(積極財産)をもらうだけです。また、遺贈の放棄も「いりません」と意思表示をするだけで大丈夫です。
一方、「全財産の2分の1を与えるというように割合で示してするのが包括遺贈です。包括遺贈は、特定遺贈と異なり、プラスの財産もマイナスの財産も両方同じ割合で承継します。このため、包括受遺者は相続人と同じ扱いとなり、遺産分割協議にも参加することになります。なお、包括遺贈を受けたくなければ、相続人と同様の手続きを踏まなければなりません(相続放棄の申述)

「遺贈する」と「相続させる」の違い

遺贈は遺言によって、財産を相続人または相続人以外の者に与えることをいいますが、一般的には相続人以外の者に与える場合を遺贈というようです。一方で、遺言書の中で相続人あてに財産を与える場合は「相続させる」という文言を使うのが一般的です。

このような「遺贈する」「相続させる」の違いは何なのでしょうか?

平成3年4月19日の最高裁判所判例によると、「遺言書による相続において「相続させる」と書くことは、その趣旨が遺贈であることが明らかであるかまたは遺贈と解すべき特段の事情がないかぎり遺贈と解すべきではなく、民法908条にいう遺産の分割の方法を定めたものである。このような遺言にあっては、当該遺言において相続による承継を当該相続人の受諾の意思表示にかからせたなどの特段の事情のないかぎり、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時に直ちに当該遺産が当該相続人に相続により承継される。」と解釈されています。

これは何を意味するかというと、「相続させる」と書くとその財産は被相続人が死亡したときに、既に相続人の所有物になっているということなのです。つまり、遺産分割に関する話し合いをするまでもなく、特定の相続人の自由にできるということになります。例えば、特定の不動産を特定の相続人に「相続させる」と書けば、その相続人は他の共同相続人と協議せずに、その所有権を自分に移転登記できることになります。そうすると、遺産相続における手間が省けるというメリットがでてきます。

この他にも、「相続させる」と書いたほうが「遺贈する」と書くよりも、不動産の所有権移転登記における登録免許税が少なくて済むというメリットもあります(「遺贈する」では評価額の1000分の20、「相続させる」では1000分の4)。
ただ、『そうか、登録免許税が安くなるのか。じゃあ、全部「相続させる」と書けばいいんだな。』というのは、早計というものです。なぜなら、相続人以外に与える場合はすべて「遺贈」とみなされるため、「相続させる」と書いても登録免許税は安くならないからです。ご注意ください。

死因贈与契約

遺贈と似たものに死因贈与契約があります。これは「自分が死んだら土地と家をあげます」というように、贈与者の死亡により効力を生ずる贈与契約をいいます。契約というくらいですから、当事者双方の合意が必要です。
死因贈与は、自分の死後に財産を贈与する点で遺贈に似ているので、民法の遺贈に関する規定(964条以降)を準用します。なお、かかってくる税金は、贈与税ではなく相続税です。




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