相続-不動産賃貸借

相続事例-賃貸借

賃借人(借主)が亡くなった場合

Q.借地・借りているマンションやアパートはどうなるの?

A.被相続人(亡くなった方)が、借地の上に家を建てて住んでいたり、あるいは賃貸アパートやマンションを借りて住んでいたりしてその借地上の建物を相続する場合、また、アパート、マンションにそのまま相続人が住み続ける場合にも、その借地権、借家権も被相続人の財産として、当然相続財産の対象とされます。

Q.借地、借家の相続ではどんな手続が必要?

A.その賃貸物件の貸主(地主や大家さん)が被相続人(亡くなった方)と結んだ賃貸借契約の借主の名義を、相続人(自分)の名義に書き換えてもらえればそれで完了します。 

この場合、相続は被相続人の地位の承継で賃借権の譲渡とは違いますので、貸主の承諾は不要です。貸主は原則として、借主の法定相続人がその賃借権を相続することを拒否することはできません。

また、相続を理由に相続人に賃貸借契約の名義書換え料を請求する貸主がいても、法律上はできないことになっているので拒否することも可能です。被相続人の死後、その同居人がちゃんと賃料を払っていたなら、特に名義変更の必要など感じないかもしれませんが、その後のトラブルを防止するためには、名義書換えをしておいたほうが無難と思います。


Q.借地または借家の賃貸借契約の賃借人の名義を書き換えるには?
・手続き先  
地主または家主 
・必要書類  
地位の承継ですから、公には必要書類は必要とはしません。地主・家主から相続関係の確認のため要求されることもあるのでその場合は 必要になることがあります。 
・手続き費用  
名義書換料などは請求できないのが原則とされていますので、基本的には不要です。


Q.同居していないとダメ?

A.亡くなった人が世帯主で、その人と一緒に住んでいた相続人(妻や子供)は無条件にその権利を承継し、そのまま居住し続けることができます。 
被相続人と同居していない場合でも、その法定相続人なら被相続人が借りていた物件の賃借権を相続することができる場合があります。 この場合に相続人が複数いる場合には、それぞれの相続分割合に応じて共有することも可能です。

Q.仮に被相続人と同居していたのが内縁の妻の場合は?

A.被相続人が賃借していた居住用建物に同居していた内縁の妻や養子などは、契約者本人の被相続人が亡くなった場合はどうなるでしょうか法律的には内縁の妻や養子には、原則として相続権がありません。しかし、借地借家法は他に相続人がいないことを条件に、内縁の妻などに借家権の承継を認めています。  この場合、他に相続人がいると、この借地借家法の規定は適用されません。借家権を承継し、そのまま住み続けたい場合は相続人と話し合うしかないのです。とはいっても、このような場合には裁判所が内縁の妻などの状況を斟酌し、居住権を認めることも少なくありません。    例えば、同居もしていないのに相続人の一人が内縁の妻を追い出すだけのために同意しないというようなときには十分対抗できると思います。ただし、これは借家の場合についていえるだけで借地権には例外は適用されません。  借地権を内縁の妻に承継させたいと考える被相続人の取るべき方法は、生前贈与や遺言書による贈与により借地上の建物を内縁の妻名義にしておくことが肝心です。こうすることによって、借地権を相続するのと同様の効果をえることができます。

 ◆借地借家法36条の規定(強行規定)
(居住用建物の賃貸借の承継) 第三十六条  居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、その当時婚姻又は縁組の届出をしていないが、建物の賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後一月以内に建物の賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない。 2  前項本文の場合においては、建物の賃貸借関係に基づき生じた債権又は債務は、同項の規定により建物の賃借人の権利義務を承継した者に帰属する。 

賃借人(貸主)が亡くなった場合

Q.賃料の振込先はどうすればいい?

A.被相続人(父親)が亡くなって、ただちに遺産分割協議とはいかないが、被相続人の所有しているアパートの家賃はどこに振り込んでもらえばいいのでしょうか?
また、そのためにはどのような手続きをすればいいんでしょうか?
というお問合せをいただくケースがよくあります。

大家さんであった本人が死亡すれば振込先口座も凍結されてしまい、賃料の振込先も中に浮いてしまいかねません。遺産分割協議が順調にすすみ賃貸アパートを相続する人が早くきまれば、振込先の変更を案内すればいいのですが、順調にすすんでもある程度の時間はかかるというケースがほとんどです。 
そのため、遺産分割協議で話がきまるまでは暫定的に、賃料振込先を代表となる相続人を決めておいて、賃借人には、被相続人が死亡し相続が開始したこと、今後の賃料については相続人間で代表相続人を選任したので、賃料の振込先を代表相続人宛してもらうよう依頼通知をだすことによって対処するという方法があります。  

大概のケースではこのやり方で、賃借人の協力も得られています。
そして、後日、正式に相続人が決定した段階で改めて、大家(貸主)として契約名義人の変更も含めて案内するようにすればいいのではないでしょうか。 

Q.遺産分割協議までの賃料はだれのもの?

相続開始から遺産分割決定まで何年もかかったりすると、その間の家賃収入はだれのものか、が問題になります。

民法では、「遺産の分割は相続開始のときにさかのぼって効力が生じる」、となっていますので、一見すると、遺産分割で収益不動産を相続することが確定した相続人が、被相続人(亡くなった人)の死亡から遺産分割決定までの間の家賃をもらう権利がありそうです。

しかし最高裁は、遺産分割が決まらない間の家賃収入は、相続人全員の共有財産である、として、家賃収入と収益不動産は別のものであるとみなしました。
遺産分割確定後は当然、収益不動産の家賃収入ももらう権利がありますが、遺産分割確定前は共有財産ですので、法定相続分にしたがって分けることになります。
これではなんだか収益不動産を相続した相続人も釈然としませんが、この場合遺産分割協議等で何らかの手当てをしていただくことになると思います。


cf.)平成17年の最高裁判決「遺産は共同相続人の共有に属するものであるから、この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果、生じる金銭債権たる賃料債権は、遺産とは別個の財産というべきであって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものである」と結論づけています。  
つまり、相続財産とは別で、相続人が相続分に応じて取得するものだと判断しています。


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